2019年03月31日

      
なんとも後味の悪い終わり方をした雑誌でしたが、今回の広河氏の件は、女として生きている自分や友人知人の過去や現在を見直して検証する良い機会にもなりました。斎藤さんの辛口なコラムに2年弱に渡り21回の挿絵を描かせていただけたことを誇りに思っています。
  応援してくださった皆々様、本当にありがとうございました!


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2019 Outlook 最終号
斎藤美奈子 コラム
DAYS JAPAN
『OUTLOOK』
最終号



広河事件の
 背後に見える
もうひとつの闇



 連載の最終回でまさかこんな話を書くことになろうとは。まず読者にお願いしたい。どうか厳しい目でこの検証号を検証してほしい。
 「週刊文春」で報じられた広河隆一元編集長の性暴力は、被害者の数といい継続性といい手口といい、昨今発覚した類似の事件の中でも特に悪質だった。著名なフォトジャーナリストとしての表の顔と、長期にわたり女性の人権を踏みにじってきた裏の顔。ジキルとハイドみたいに見えるけど、広河氏の中でおそらく矛盾はなかったのであろう。
 自分は社会正義のために闘っている。そう自認する男性とその取り巻きは時にとんでもない過ちを犯す。私は正しいのだから周囲の人間は私に奉仕して当然だ、という傲慢な考えをどこかで抱き、周囲もまたそれを黙認(容認)するのである。
 非合法だった戦前の日本共産党は「ハウスキーパー制」という偽装結婚を容認していた。ハウスキーパーと呼ばれる女性党員の役割は男の党員の補佐と身の回りの世話、そして性の相手である。戦後の新左翼運動や学生運動の中でも、女子学生はしばしば下働きと男の活動家の性の相手をさせられ、それが70年代にウーマンリブ運動が産声を上げる発端のひとつになった。
 広河氏の場合は、年長であり、フォトジャーナリストとしての実績とデイズジャパンのトップという権力を笠に着た行為であった分、さらにタチが悪い。犠牲を強いられた女性たちはもちろん、種々の活動や写真や執筆で本誌にかかわった多くの人たちを、そして本誌を支えてきた読者を彼は裏切った。
 唯一の救いは、本誌の休刊前に広河氏の行状が発覚したことである。勇気をもって被害者たちが体験を語ってくれなかったら、この件もまた闇に葬られていたことだろう。
 ただ、話はここで終わらない。もうひとつ問われるべきは彼の行為を薄々知りつつ放置してきた組織、もっといえば役員たちの責任である。広河氏は本誌の事実上の独裁者でありパワーハラスメントの当事者でもあった。とすれば社員やアルバイター、ボランティアスタッフが彼に意見するのは難しい。彼の行状を知り彼を制する立場にあった人はいなかったのだろうか。
 と、こんな疑問を挟むのは、事件発覚後のデイスジャパンの対応がきわめて不可解だったからである。謝罪文と検証予告が載った前号の後、ジョー横溝編集長から辞職の知らせが届いたのが1月末、残る2人の編集部員が退社したのが2月末。3人は最終号で徹底検証、徹底報告すべきだと主張したが、会社側が了承せず、やむなく退社に至ったと聞く。早々に検証に乗り出した弁護士の解任も不信の念を抱かせる。この期に及んで事実の解明と公表を、まさか経営陣が拒んでいるのか。
 私・斎藤にこの原稿の依頼(連載なのに変だけど)が来たのは校了の4日前だった。本号の内容は現時点では不明である。しかし、以上のような経緯があったことはお伝えしておきたい。旧スタッフが一掃され、新しい検証委員会が立ち上がり、誰がどんな形で編集しているかも知らされぬまま発行された検証号。はたして事件の全容は背景も含めてどこまで解明されているだろうか。

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デイズジャパン最終号は二部構成
第一部「広河隆一 性暴力報道を受けて 検証委員会報告」
第二部「性暴力をどう考えるか。連鎖を止めるために」

会社内部や会社の弁護士による自己検証では不十分、第三者による検証委員会方式が適切だという考えから、委員長に職場のハラスメント研究所代表・金子雅臣氏、委員に弁護士の上柳敏郎氏、弁護士の太田啓子氏という検証委員会を作って取材編集を、第二部はメディアで働く女性ネットワークの代表世話人であるジャーナリストの林美子さんによる責任編集となったようです。

*今回は斎藤さんの文章を公開させていただきました。
*「DAYS元スタッフの会

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2019.2月号 *挿絵掲載初回 2017.6月号

(10:56)

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